池田名誉会長と、20世紀最大の歴史家の一人であるアーノルド・J・トインビー博士との対談をまとめたものである。
1969年、博士から名誉会長へ、その意向が伝えられ、実現した同対談。
「やりましょう! 21世紀の人類のために、語り継ぎましょう!」――トインビー博士のこの言葉とともに始まり、72年5月、73年5月に、延べ10日間、40時間をかけて行われた。
その内容は多岐にわたる。2人の視座は、21世紀に向かう人類の課題を解決していく方途の探求に向けられ、人間という存在、教育の在り方、戦争と平和、指導者の条件、組織論、世界統合化への道、宇宙観、生命の永遠性、宗教の使命など、およそ人間に関するあらゆる問題が盛られているといってよい。
西欧の歴史家と東洋の仏法者というそれぞれの立脚点の相違を超えて、「21世紀を人間革命の世紀にする」等、実に多くの部分で意見の合致を見ている。
最晩年の世界的碩学と、東洋の行動する仏法指導者が縦横に編み成した、思索と対話の結晶が、ここにある。
対話の最後にアドバイスを求めたSGI会長に、トインビー博士は語った。「私は“机上の学者”に過ぎません。しかし、あなたは大乗仏教の実践者です。“実践の人”に“机上の学者”がアドバイスするなど、おこがましいと思います。どうか誰が何といおうとも、その道を真っすぐに堂々と歩んでください」と。
世界各国の識者から「人類の教科書とも言える一書」等と高い評価が寄せられている。同対談は、これまでに世界26言語で翻訳され、各国の指導者が愛読し、大学の教科書にも使用されている。
第一部 人生と社会
第一章 人間はいかなる存在か
1 人間の動物的側面/2 遺伝と環境について/3 精神と肉体の関係/4 深層心理の探究/5 理性と直観
第二章 人間を取り巻く環境
1 人間と自然/2 天災と人災/3 現代都市の諸問題/4 都市から農村へ/5 終末論に対して/6 地球の汚染を防ぐために
第三章 知的生物としての人間
1 学問・教育のあり方/2 文学とその役割/3 知識人と大衆/4 知識人・芸術家の政治参加/5 科学的思考法の限界
第四章 健康と福祉のために
1 医学における倫理観/2 臓器移植に関して/3 一般医と専門医/4 老人への福祉/5 国民総生産か国民総福祉か/6 母親業という“職業”/7 産児制限と家族数
第五章 社会的動物としての人間
1 新しい労働運動のあり方/2 余暇の増大に対して/3 組織と価値観/4 複数組織からの挑戦/5 世代間の断絶と“体制”/6 マスコミの中立性/7 信教の自由について/8 出版の自由の限界/9 死刑廃止について/10 自殺と安楽死